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コラム金管楽器の話

トロンボーンとユーフォニアムは何が違うのか|同じ音域なのに、スライドとバルブ

トロンボーンとユーフォニアムは何が違うのか|同じ音域なのに、スライドとバルブ

トロンボーンとユーフォニアムは、どちらもB♭管で、管の長さも同じ程度です。音域もほぼ重なり、吹奏楽ではどちらもヘ音記号の実音で書かれることが多い、よく似た中低音の金管楽器です。

それでも、吹き方と音色ははっきり違います。違いの核心は、音の高さをスライドで変えるかバルブで変えるかと、管が円筒のまま進むか、少しずつ広がっていくかの2点にあります。

トロンボーンとユーフォニアムの違い:まず1分だけ

トロンボーンは、U字の管(スライド)を伸び縮みさせて管の長さを変え、音の高さを決めます。スライドの位置は手前の第1ポジションから第7ポジションまであり、1つ伸ばすごとに半音下がります。

ユーフォニアムは、3本か4本のピストンバルブを押して、管の長さを段階的に切り替えます。管は根元からベルまで少しずつ太くなる円錐管です。同じ高さの音を、片方は腕の位置で、もう片方は指の組み合わせで作っている、と考えると分かりやすくなります。

並べて見ると、同じなのは管の長さと音域です

比べる点

トロンボーン

ユーフォニアム

音の高さの変え方

スライド(7つのポジション)

ピストンバルブ(3本または4本)

管の形

大部分が円筒

全体が少しずつ広がる円錐

調と管の長さ

B♭管

B♭管(トロンボーンと同じ長さ)

音色

強く吹くと輝きが増しやすい

トロンボーンより柔らかく温かい

主な活躍の場

オーケストラ、吹奏楽、ジャズ

吹奏楽、ブラスバンド。オーケストラではまれ

大事なのは、調と管の長さの行です。ユーフォニアムは“トロンボーンより低い楽器”ではなく、同じ高さの帯を、別の仕組みと別の音色で受け持つ楽器です。スライドの7つの位置と、そこから出る音はトロンボーンがスライドを使う理由を書いた記事に表でまとめています。

音色の差が生まれる理由:円筒の管と、広がる管

金管楽器の管は、円筒が多くを占めるものと、円錐が多くを占めるものに分けて説明されます。オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)物理学部の解説では、トランペット、トロンボーン、ホルンは管の大部分が円筒です。ユーフォニアムとテューバは、広がりが長く円筒部分の短い、別の一族に入れられています。

強く吹いたときの差も、この形から説明されています。同じ解説によると、強奏で高い倍音が増える効果は、長く細い円筒部を持つトランペットやトロンボーンで強く、フリューゲルホルンやテューバでは弱いとされます。ユーフォニアムはこの比較に名前が出てこないため、テューバと同じ側にあると見るのは私の整理です。

スライドの仕組みも、管の形を決めています。内側の管と外側の管を重ねて滑らせる以上、その部分は太さの変わらない管でしか作れません。トロンボーンが円筒の楽器であることは、スライドという仕組みと切り離せないのです。

二つの楽器が生まれた時代:スライドは古く、バルブは新しい

トロンボーンの祖先は、バルブが生まれるずっと前からある楽器です。ユーフォニアムは、バルブが広まった19世紀に生まれました。

年

場所

できごと

15世紀

ヨーロッパ

トロンボーンの祖先サックバットが現れる

1808年

ウィーン

ベートーヴェンの交響曲第5番が初演。3本のトロンボーンが終楽章の冒頭で初めて加わる

1843年

ヴァイマル

楽長ゾンマーがゾンメロフォンを考案。翌年「Euphonion」の名で作られる

1878年

イギリス

ブージー社のブレイクリーが、4本バルブの補正方式で特許を取る

第5番の終楽章では、それまで黙っていた3本のトロンボーンが、ピッコロやコントラファゴットと一緒に入ってきます。交響曲でトロンボーンを使った早い例として知られますが、前年の1807年に別の作曲家の交響曲がすでに独立したパートを書いていたという記述もあり、「最初」とは言い切れません。

ユーフォニアムの名前は、ゾンマーの楽器が「Euphonion」として作られたことにさかのぼります。現代の形を決めた補正方式は、後の「一段深く」で扱います。

どんな場面で吹かれるのか

オーケストラでは、トロンボーンは定席を持つ楽器です。ユーフォニアムの出番はまれで、テナーテューバの指定として書かれることが多く、ホルストの組曲「惑星」の「火星」のソロや、リヒャルト・シュトラウスの「ドン・キホーテ」が知られます。

吹奏楽では、ユーフォニアムはテナーの音域の主要な独奏楽器として扱われます。ホルストの「吹奏楽のための第2組曲」第1曲には、長いソロがあります。英国式のブラスバンドの標準編成では、ユーフォニアム2本、テナートロンボーン2本、バストロンボーン1本が並びます。

一段深く:音程を合わせる手段が違う

吹奏楽で低音の列に座るテューバ奏者の側から見ると、この二つは音程の合わせ方がまるで違う楽器です。トロンボーンは、スライドの位置そのものが音程なので、腕の位置を少しずらすだけで、連続的に直せます。同じ音を別のポジションで取る替えポジションがあり、グリッサンドもこの仕組みから生まれます。

バルブの楽器は、押す組み合わせごとに足す管の長さが決まっています。単純に管を足すだけでは、すべての組み合わせを正しく合わせられず、とくに1番と3番を同時に押す音などは高めに外れやすくなります。同じことはテューバでも起き、その向きと大きさはバルブを2本以上押すと音程が上ずる理由を計算した記事で確かめています。

この弱点を設計で埋めたのが、1878年に特許となった補正方式です。押したバルブに応じて追加の管を通し、低い音域の音程を下げる仕組みで、多くのユーフォニアムの4本目のバルブがこれにあたります。音程の責任を、トロンボーンは腕で、ユーフォニアムは楽器の設計と唇で受け持っている、と言えます。

よくある質問

Q. トロンボーンとユーフォニアムのマウスピースは同じですか

A. よく似ています。メーカーのカタログでもトロンボーン用と共通に扱われることが多いとされます。ただし、ユーフォニアムにはトロンボーン用よりやや深いカップが好まれる、とも説明されます。

Q. ユーフォニアムの楽譜はト音記号ですか、ヘ音記号ですか

A. 両方あります。ふつうはヘ音記号の実音で書かれますが、英国式のブラスバンドではト音記号の移調楽譜で書かれます。アメリカの吹奏楽譜では、同じパートが両方の記号で用意されていることも多いとされます。

まとめ

トロンボーンとユーフォニアムは、同じB♭管で、音域もほぼ重なります。違うのは、音の高さをスライドで変えるかバルブで変えるかと、円筒の管か広がる管かという点で、トロンボーンは強く吹くと輝きを増し、ユーフォニアムは柔らかく温かく響きます。中低音の金管がもう1つの楽器とどう違うのかは、ユーフォニアムとバリトンを比べた記事で続きを読めます。次に吹奏楽を聴くときは、同じ旋律が腕の動きで鳴っているのか、指の動きで鳴っているのかを見比べてみてください。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。

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