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コラム金管楽器の話

テューバとスーザフォンは何が違うのか|同じ低音なのに巻いて吹く理由

テューバとスーザフォンは何が違うのか|同じ低音なのに巻いて吹く理由

行進しながら吹くマーチングバンドの後ろに、体にぐるりと巻きつけた巨大な金管楽器が見えます。オーケストラの舞台で、椅子に座って構えるテューバとは、並べてみると別の楽器のようです。ところが、どちらも低音を受け持つ「テューバの仲間」と呼ばれています。

結論を先に言うと、スーザフォンはテューバの一種で、同じ調なら管の長さも音域も変わりません。違うのは管の巻き方とベルの向きで、行進しながら低音を前に飛ばすために、体に巻いて担げる形へ作り替えられた楽器です。テューバ奏者の私から見ても、中身は同じで、外の形だけがまるで違う関係です。

テューバとスーザフォン:まず1分だけ

スーザフォンは、同じ調のテューバと管の長さと音域がそろっています。違いが出るのは、体への載せ方、ベルの向き、バルブの作りの3点です。

比べる点

コンサート用のテューバ

スーザフォン

管の長さと音域

調によって決まる

同じ調なら、テューバと同じ

構え方

体に巻かず、座って構えるのが一般的

体にぐるりと巻き、重さが左肩にかかる

ベルの向き

上向きが一般的

頭の上から前へ向く

バルブ

数も種類もさまざま(ロータリーも使われる。補正機構つきもある)

ほぼ3本のピストンバルブ(補正機構は付かない)

主な場面

管弦楽、吹奏楽、ブラスバンド

マーチングバンドなど、歩いて演奏する場

この表で大事なのは、一番上の行です。スーザフォンは「別の音域を担当する楽器」ではなく、同じ低音を、歩きながら出せる形に作り替えた楽器だということが分かります。生まれた経緯はテューバの日の記事で扱っているので、ここでは構造の違いに絞ります。

なぜ、体に巻く形になったのか

行進する奏者は、両手で楽器を抱えたまま歩き続けなければなりません。座奏のテューバのように、膝や台に預けることができないので、重さを体のどこかで受け止める形が必要でした。管をぐるりと丸めて肩に載せる形は、その答えのひとつです。

もうひとつの理由は、音の向きです。スーザフォンの生みの親とされるスーザは、低音を楽団員の頭越しに客席へ届けたいと考えていました。そのため最初の型は、ベルが頭の上で大きく開いた形で、真上を向いていました。その姿から「雨受け(レインキャッチャー)」と呼ばれましたが、のちにベルが前向きに改められ、いまの形になっています。

金管のベルの向きが音の聞こえ方を決める話は、吹奏楽の楽器配置の記事でも触れています。低音は広がりやすい一方で、高い成分ほど、ベルが向いた方向に強く出ます。前向きのベルは、その高い成分を観客の側へ向ける効果があるのではないか、と私は見ています。

一段深く:軽さのために削られたもの

スーザフォンの重さは、およそ8〜23kgの幅があります。FRP(繊維強化プラスチック)製は1961年から作られていて、約8kgの軽い型もあります。担いで歩くことが前提なので、軽さが最優先の設計です。

軽さのために、機構も簡素になっています。現代のスーザフォンは、ほぼ3本のピストンバルブだけで、一部のコンサート用テューバに付く補正機構は付きません。補正機構は音程を機械が整えてくれる便利な仕組みで、主にイギリス系の楽器に見られます。スーザフォンでは、単純さと軽さのために、使われていません。

ベルの大きさについては、テューバ奏者の自習室のベルが大きいほど音量が出るのかという回で計算しています。計算の上では、ベル径を変えて影響が出るのは主に高い音域で、低い音域はほとんど動きませんでした。口径の話であって向きの話ではないので、そのまま当てはめることはできません。ベルを前へ向けたスーザフォンの設計が高い成分の届き方を変えているのかは、私の見立ての段階です。

よくある質問

Q. スーザフォンとテューバは、音の高さが違いますか

A. 調が同じなら、管の長さが同じなので、音域も同じです。スーザフォンは B♭ 管が多く、以前は E♭ 管も多く使われていました。テューバには F・E♭・C・B♭ の管があり、使う場面によって選ばれます。

Q. マウスピースも同じものを使うのですか

A. どちらも、テューバ属らしい大きなカップのマウスピースを使います。ただ、スーザフォンはマウスピースを挿す管(グースネック)を取り外せる作りが多く、奏者の背の高さや体型に合わせて、口元の位置を調整しやすくなっています。

まとめ

テューバとスーザフォンは、同じ調なら管の長さも音域も同じで、違いは管の巻き方、ベルの向き、バルブの作りにあります。歩きながら吹くために、体に巻いて担ぐ形へ作り替えたのがスーザフォンです。次に行進の演奏を見るときは、前を向いたベルと、軽さのために削られた機構にも目を向けてみてください。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。

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