一般社団法人LFコンサート

テューバ奏者の自習室

楽器にまつわる“よく言われること”を、音響シミュレーションで一つずつ確かめています。

音響シミュレーションで、テューバの定説や金管楽器のメカニズムを再現できるか実験しています。 あくまで理論上の計算結果や、他の研究者の方の研究内容の紹介ですが、 何か皆さんのご参考になればと思います。

一般社団法人LFコンサート 代表理事 テューバ奏者 小林悠真

いま、どこまで言えるか

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形・寸法

計算上、2本以上の組合せ11通りはすべて上ずる方向にずれ、1+2+3+4 で +163.65 セント(約1.6半音)。管の長さは足し算だが音程は比で動くので、数学的な必然として起きる。

ただし — 数値はモード2〜8の平均で、個々の音では大きく散る(1+2 では7モード中4モードが逆に下がる)。

計算上、テューバは平均 −0.57 セント/mm。よく言われる 2 セント/mm の約 1/3.5 しかない。

ただし — 2 セント/mm はトランペットの通説で、管が長いテューバにそのまま持ち込めない。

計算したのは音のツボの深さ(共鳴の山の高さ)。ベル径 400→500mm で深くなったモードは無く最大 −0.7dB、逆に 350mm に絞ると高い音域で最大 +1.09dB 深くなった。低い音域(モード2〜5)は 0.15dB 未満でほぼ動かない。

ただし — 音量そのもの(放射される音)は計算していないので、「音量が出るか」にはこの計算では答えられない。

計算上、フレア指数を 0.5→1.1 に変えるとモード2が 34.1 セント動く。高次の落ち込みも 2.1 モード分前倒しになる。

計算上、マウスパイプだけを替えると全長も一緒に変わるので、まず楽器全体の音程がずれる。抜差で合わせ直すと大半は消え、残るのはモード4だけの逆向きのズレ(−15% で +11.1 セント、他のモードは −6.2〜+4.2 セント)。

ただし — 「長さそのものの効果」と「全長が変わったぶんの効果」は、合わせ直して初めて分けられる。合わせ直す前の数字をマウスパイプの効果として読まないこと。

計算上、深さ 25% あたりから知覚できる域に入る。ただし場所依存が大きく、同じ深さでも −10.6 セントからほぼ 0 まで幅がある。

計算上、現実的な 1〜2mm の範囲では音程 最大1.3セント・音のツボの深さ 0.04dB で、ほぼ何も起きない。極端な 8mm でようやくモード4が 5.3 セント動く。

計算上、形状は効くが出方が音程側に偏る(カップ長×1.4 で 11.8 セント)。

ただし — 「音色」そのものは現行の計算では扱えない。効いているのが音程なのか音色なのかを、この計算だけでは分けられない。

計算上、バルブ区間だけを見れば息の通りにくさは 15〜30% 減る。ただしバルブ区間が占めるのは、この計算が見ている口元からバルブ出口までの圧力の落ちのうち 10.9%(毎秒0.5Lのとき。息の量を毎秒0.2Lまで落とすと 20.1%)でしかないので、段階的に太くした場合の合計は −2.0% にとどまる。一段で太くしたときに段差そのものが生む損失は 0.06Pa = その合計の約 0.3% で、「段差が息を邪魔する」という言い方はこの計算では支持されなかった。

ただし — 「吹きやすさ」はこの回で3つに割れた。①音のツボの深さ(入力インピーダンスの山の高さ)②息の通りにくさ(定常流の圧力損失)は計算済みだが、③奏者の言う発音のしやすさ・抵抗感は唇との連成が要るのでまだ測れていない。奏者がどれを指しているかは特定できていない。バルブのポート形状と屈曲も未評価。

計算上、動く。深く挿すほど音程は上がり、応答は 1mm あたりモード平均 0.36 セント、最も動くモード4で 0.67 セント。基準から ±4mm でモード4が 2.7 セント=目安 5 セントの半分強。モード平均で見れば変化の多くは「挿し込んだぶん管が短くなった」当たり前の成分だが、その取り分は何を基準に置くかで決まる量で一意に決まらない(全長の比から出る一律成分を基準にすると平均 87%・モード4で 46%、同じ長さをバルブ区間で詰めた対照を基準にすると 83% と 58%。どこで詰めるかを替えればさらに動く)。

ただし — 公開済みの「ギャップ」の回とまったく同じ計算で、あちらが 5.3 セントとして出した量を、この回は真ん中を基準に取り直したので両端の 2.7 セントと 2.6 セントに分かれている(足すと 5.3)。別々の発見ではない。抜差で合わせ直してもモード間に開きが残る(抜差をバルブ区間と見なすと 1.24 セント、枝管側と見なすと 1.78 セントで 1.4 倍動く)が、これはギャップと抜差の両方が作る差なので片方のせいにできない。管の端の補正は計算に入れておらず、入れたときにこの差がどう動くかは確かめていない。音のツボの深さは、何も合わせ直さない場合と抜差管で合わせ直した場合を通じて 0.20dB しか動かないが(枝管側で合わせ直した対照まで含めると 0.22dB)、これは「変わらないと分かった」のではなく、このモデルに挿し込みが抵抗感を変える仕組みがそもそも入っていないだけ。±4mm という幅も、基準ギャップ 4mm を仮定して決めた範囲であって実測ではない。

状態・環境

計算上、現実的な膜厚 2µm では 0.072 セントで、知覚の閾値の 1/69 にしかならない。あり得ない 200µm まで盛っても 7.25 セント。

ただし — 見ているのは膜が内径を狭める形の経路だけ。粘度・操作感、膜による減衰の増加、そして下の「気密」の経路は評価していない。

計算上、合わせ目ひとつあたりで見ると、グリスが埋める寸法のすきま(半径 20〜50µm = 直径 0.04〜0.1mm)は音程をほとんど動かさない。いちばん効く位置といちばん動くモードを選んでも 0.106 セント=目安 5 セントの 1/47 以下で、音のツボの深さも 0.275dB まで。ひとつで 1dB 級になるのは半径 100µm(直径 0.2mm のガタ)からで、そこはもう銘柄の差ではなく嵌合そのものが緩んだ状態である。ただし合わせ目は複数あり、合計は本数ではなく「どこにあるか」で決まる —— 50µm を10か所置いたとき、管全体に散らせば 0.79dB、口元寄りに集めると 1.96dB で、同じ本数でも答えが変わる。

ただし — 音のツボの深さは入力インピーダンスの山の高さであって、放射される音量ではない(放射音は計算していない)。粘度そのものは扱っておらず、オイルやグリスは「すきまを埋めて幅を小さくするもの」としてしか入らない。すきまを真円・同心として扱っているので、抜差管が自重で片側に寄ると同じ平均すきまでも 2.45 倍になる。実機の合わせ目が何か所どこにあるかは測っていないので、楽器全体で何 dB とは言えない。

計算上、堆積 0.1mm で 3.6 セント、1.0mm ではモード2が 38.9 セント下がりモード4が 36.9 セント上がって、モード間が 76 セント開く。オイルとの境界はおよそ 140µm。

ただし — 見ているのは堆積による形の変化だけで、表面が粗くなることによる損失増は評価できていない。奏者の「鳴らない」という体感はそちらが本命の可能性があり、この結論は過小評価の疑いがある。

計算上、一様な温度変化では約 2.9 セント/℃ で、経験則と合う(理想気体の音速∝√T から解析的にも出る値)。ただし管内に温度の勾配があると揃わず、吹き始めでモード間が 9.02 セント、暖まった状態でも 3.05 セントばらつく。

ただし — つまりマウスピース側だけ暖めても全体は揃わない。呼気のCO2・水蒸気と真鍮の熱膨張は未考慮。

現在調査中

計算がこれからのもの、計算はできても記事にしていないもの、いまの計算では扱えないものが混ざっています。 結果が出たものから記事にしていきます。

  • 「ボアが太いと音が暗くなる・音量が出る」
  • 「管に穴が開いたら音はどうなるのか(ウォーターキーの隙間も)」
  • 「マウスピースのスロートやバックボアで何が変わるのか」
  • 「管の断面が真円でなくなると音が変わるのか」
  • 「管の曲がり(巻きのR)のきつさで音が変わる」
  • 「ロータリーとピストンで音色が違う」
  • 「5番バルブ・コンペンセイティングの優劣」
  • 「ラッカーは暗い音、銀メッキは明るい音」
  • 「一枚取りのベルは金属が硬く音がいい」
  • 「極低温処理で音が良くなる」
  • 「壁の振動が音に影響する」
  • 「銅の含有量が多いと温かい音になる」
  • 「メッキの種類(金・銀・ピンクゴールド)で音が変わる」
  • 「ベルの肉厚で音が変わる」
  • 「はんだ付けのやり方で音が変わる」
  • 「吹き込むと楽器が育つ(エージング)」
  • 「ヴィンテージの楽器は音程が悪い」
  • 「標高の高い場所では音程が変わるのか」
  • 「湿度で音程が変わるのか」
  • 「管の中に水が溜まると音が変わる」
  • 「重いマウスピースはパワフルに鳴る」
  • 「ヘビーバルブキャップで音が締まる」
  • 「楽器が重いほど豊かな音になる」
  • 「クランツ(ベル縁の補強リング)で音が変わる」
  • 「支柱の位置や本数で音が変わる」
  • 「音を作っているのは楽器か、奏者か」
  • 「ペダルトーンはなぜ鳴るのか」
  • 「高い音域が出にくいのはなぜか」
  • 「テューバは他の金管より息をたくさん使う」
  • 「息のスピードが速いほど音が飛ぶ・太くなる」
  • 「タ・ティ・トゥなど口の中の形で音色が変わる」
  • 「テューバは音の出だしが遅い」
  • 「バルブは素早く切り替えたほうがいい」
  • 「抵抗のある楽器・ない楽器は何が違うのか」
  • 「「ツボが深い」と「ツボが広い」は同じことなのか」
  • 「息が入りやすい楽器・入りにくい楽器は何が違うのか」
  • 「楽器の抱え方(手や体の当て方)で音が変わる」
  • 「音が飛ぶ人と飛ばない人がいるのはなぜか」
  • 「自分の近くで聞こえる音と客席で聞こえる音は違うのか」
  • 「ホールによって響きが変わるのはなぜか」
  • 「弱音器をつけると何が変わるのか」
  • 「ベルの向きで客席への届き方が変わるのか」
  • 「譜面台や壁が近いと音が変わるのか」
  • 「明るい音と暗い音は波形の何が違うのか」
  • 「フォルティシモで音が硬くなるのはなぜか」
  • 「F管とB♭管は何が違うのか」
  • 「トランペットやトロンボーンとテューバは何が違うのか」

記事を読む

一つひとつの検証を、図と一緒に記事にしています。

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調べてほしいこと

この説も数値シミュレーションでみてみてほしい、ということがあればなんでも教えてください。
順次検証し、結果が分かったものから記事にして公開いたします。

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