ここで扱うバリトンは、声の種類のバリトンではなく、金管楽器のバリトン(バリトン・ホーン)です。声種のバリトンについては、テノールとバスの違いで、テノールとバスの間の声として説明しています。
金管楽器のユーフォニアムとバリトンは、どちらもB♭管で音域も近く、吹奏楽でよく混同されます。違いは主に、管の太さ、バルブの数、音色の三つに表れます。
ユーフォニアムとバリトンの違い:まず1分だけ
ユーフォニアムは、管の太さが先に向かってゆるやかに広がる円錐状の管を多く使った、やや大きめの金管楽器です。バリトンは、同じB♭管でも、一般に管が細めで、本体も小ぶりにできています。一般に、ユーフォニアムのほうが丸く豊かな音、バリトンのほうがやや軽く明るい音になる傾向があります。
音域はほぼ同じで、実用上はE2〜B♭4あたりが目安とされます。金管楽器の音域一覧では、ユーフォニアムを「テナーテューバ」とも呼ばれる楽器として載せています。
並べて見ると、どこが違うのか
比べる点 | ユーフォニアム | バリトン(バリトン・ホーン) |
|---|---|---|
管の太さ | 太めで、円錐状の部分が多い | やや細めで、円筒に近い部分が増える |
バルブの数 | 4本のものが多い | 3本のものが多い |
音色 | 丸く、豊かで深い | やや軽く、明るい |
大きさと重さ | 大きく、重い | 小ぶりで、軽い |
音域(B♭管) | E2〜B♭4が目安 | ほぼ同じ |
主な活躍の場 | 吹奏楽、ブラスバンド(管弦楽ではまれ) | ブラスバンド、吹奏楽の一部 |
上の表は、あくまで傾向です。メーカーやモデルによって、バリトンでも4本のバルブを持つものや、ユーフォニアムに近い太さのものがあります。
呼び分けが混乱する理由
混乱の背景には、国や時代によって、両者の呼び方が揺れていることがあります。英国式のブラスバンドでは二つの楽器を別のものとして扱いますが、地域や楽団によっては、同じ楽器を両方の名前で呼ぶことがあります。
日本の吹奏楽では「ユーフォニアム」と呼ぶのが一般的です。ただ、アメリカの吹奏楽の楽譜では、ユーフォニアムが吹くパートが「Baritone」と書かれていることがあります。そのため、楽譜の表記と、現場で吹いている楽器が一致しないケースも珍しくありません。
ユーフォニアムの名前と、活躍する場面
ユーフォニアムの名前は、ギリシャ語で「よい響きの」を意味する言葉に由来するとされます。19世紀半ばに登場した楽器で、丸い音色が持ち味です。
管弦楽の中でも、ユーフォニアムが目立つ場面があります。ラヴェルが編曲した「展覧会の絵」の「ブィドロ」の独奏は、ユーフォニアム(テナーテューバ)で吹かれることが多いとされます。吹奏楽のなかでも、旋律と低音の橋渡しをする中音域の主役です。
一段深く:バルブが増えると、音程の問題が小さくなる
音響設計の目で見ると、バルブの数の違いは、音程の安定に関わります。バルブを2本以上同時に押すと、音程が上ずるという性質は、すべてのバルブ楽器に共通します。低い音域ほど、複数のバルブを組み合わせて出す音が多くなるので、この問題が目立ちます。
ユーフォニアムの多くが4本目のバルブを持つのは、低音域を使いやすくするためと、音程を補正するためです。さらに「コンペンセイティング方式」と呼ばれる、上ずりを管の長さの補正で和らげる仕組みを持つ楽器もあります。バルブの組み合わせで起きる音程の問題は、バルブを2本以上押すと音程が上ずるのはなぜかでも扱っています。
私が吹くテューバも、同じ悩みを抱えています。テューバ(チューバ)はどんな楽器かでも触れていますが、低音楽器ほど管が長く、補正の工夫が欠かせません。ユーフォニアムは、その中音域版だと考えると、仕組みが見通しやすくなります。
よくある質問
Q. ユーフォニアムとバリトンは、運指が違いますか
A. バルブの押し方の基本は同じです。ただ、4本目のバルブがあるかどうかで、低音域の運指に違いが出ます。楽器を持ち替えるときは、音程の傾向の違いに慣れる時間が必要です。
Q. 吹奏楽で、バリトンとユーフォニアムのどちらが一般的ですか
A. 日本の吹奏楽では、ユーフォニアムが一般的です。バリトンは、英国式のブラスバンドでユーフォニアムとは別のパートとして使われますが、吹奏楽で見かける機会は多くありません。
まとめ
ユーフォニアムとバリトンは、どちらもB♭管で音域は近く、違いは管の太さ、バルブの数、音色に表れます。ユーフォニアムは太くて丸い音、バリトンはやや軽く明るい音になる傾向があります。次に吹奏楽を聴くときは、旋律を受け持つ中音域の音色に耳を向けてみてください。
この記事を書いた人
小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。
