一般社団法人LFコンサート
← コラム一覧
コラム楽器のひみつ

一番低い音が出る楽器はパイプオルガン|最低音を4つの楽器で比べる

一番低い音が出る楽器はパイプオルガン|最低音を4つの楽器で比べる

一番低い音が出る楽器は、パイプオルガンです。大型のオルガンが持つ32フィートの管は、最低音が約16Hzの C0 で、人の耳の可聴域とされる20Hzを下回ります。オーケストラで使う楽器では、コントラファゴットが B♭0(約29Hz)、テューバがペダル音域で少なくとも B♭0 あたり、コントラバスが E1(約41Hz)から下を受け持ちます。

「楽器が大きいほど低い音が出る」とはよく言われますが、では一番低いのはどれかと聞かれると、すぐには答えにくいものです。コントラバスなのか、テューバなのか、それとも舞台には載らない楽器なのか。同じ“最低音”でも、楽器ごとに数え方が違うからです。

私はテューバ奏者です。低音を受け持つ側から見ると、楽器が“出せる音”と曲の中で“使う音”は別のものです。この差を頭に置いておくと、最低音の比べ方がずっと分かりやすくなります。

一番低い音が出る楽器:まず1分だけ

音の高さは周波数(Hz)で表せます。数が小さいほど低い音で、C4 を真ん中のドとし、A4 を440Hzとする平均律で数えると、4つの楽器の最低音は次のように並びます。周波数はこの基準で計算した値で、楽器の調整や演奏する場所によって前後します。

楽器

最低音(実音)

周波数の目安

条件

パイプオルガン

C0(32フィート管)

約16.35Hz

大型の楽器だけ。64フィート管は C−1(約8Hz)まで

コントラファゴット

B♭0(楽器によっては A0)

約29.14Hz(A0 は27.50Hz)

楽譜は実音の1オクターブ上に書く

テューバ

少なくとも B♭0(ペダル音域)

B♭0 は約29.14Hz

現代のソロ曲で、少なくともここまで求められることがある

コントラバス

E1(4弦)/B0(5弦)/C1(C延長機構)

約41.20Hz/約30.87Hz/約32.70Hz

楽譜は実音の1オクターブ上に書く

この表で大事なのは、右端の条件の列です。オルガンの32フィートも、テューバのペダル音域も、どの楽器でも常に出番がある音ではありません。“出せる最低音”を比べているのであって、“ふだん使う最低音”の比較ではないことを覚えておいてください。

パイプオルガンだけ、別の階にいる

オルガンのストップ(音色の切り替え)は、フィートという単位で呼ばれます。鍵盤のとおりの高さで鳴るのが8フィートで、16フィートはその1オクターブ下、32フィートはさらに1オクターブ下です。呼び名は、その音色を受け持つ管のうち最も長い管の、おおよその長さに由来します。

32フィートの管は、約9.8メートルあります。ここから出る最低音が C0、約16Hzです。さらに64フィートのストップもあり、C−1(約8Hz)まで下がりますが、実際に全音域が揃った例は世界に2台、シドニー市庁舎とボードウォーク・ホールのオルガンだけだとされています。

オーケストラの楽器と並べると、オルガンは次元が違うと分かります。オルガンの C0 は、コントラファゴットやテューバの B♭0 より1オクターブ弱、コントラバスの E1 より1オクターブ以上低い音だからです。ただしこれは、32フィートの管を持つ大型のオルガンに限った話で、どのオルガンでも C0 が鳴るわけではありません。

オーケストラの底を支える3つの楽器

コントラファゴットは、B♭0 まで出る木管楽器です。楽器によっては延長管が付いて、A0 まで下がります。楽譜は実音より1オクターブ高く書かれるので、見た目の高さと実際の音がずれる楽器の一つです。

テューバは、現代のソロ曲で少なくとも B♭0 までのペダル音域が求められることがあります。いっぽう、どの種類のテューバでも無理なく出せる範囲は F1 から中央のドまでとされていて、ペダル音域は常用するところではありません。B♭管(BBb)のテューバは、管の長さがおよそ18フィート、約5.5メートルです。

コントラバスの最低音は、調弦で決まります。4弦なら E1 ですが、5弦の楽器は追加した弦を B0 に合わせるのが一般的です。いちばん低い弦の下に指板を延ばす機構を付けた楽器は、C1 まで下がります。

一段深く:“出る音”と“使える音”は違う

表の数字を見ると、最低音がいちばん低い楽器ほど、低音の主役に見えます。ところが、演奏する側の実感はそうではありません。テューバでは、基音に近づくほど息の量が増えるのに、音の輪郭がぼやけて合奏に埋もれやすくなります。出せる音と、客席まで届く音は、別の問題です。

弦楽器でも同じことが言えます。コントラバスの開放弦の E1 は確かに鳴りますが、輪郭がぼやけて、合奏の中では音の高さとして聞き取られにくくなります。だから作曲家は、低音に輪郭を出したいとき、チェロとコントラバスを1オクターブ重ねて書くのです。

16Hz という数字も、同じ目で見られます。人の耳が聞くとされる範囲は20Hzから20,000Hzで、C0 はその下にあります。一番低い音が出る楽器と、その音がいちばんよく聞こえる楽器は、一致しないのです。

3つの音域の一覧は、弦楽器、木管楽器、金管楽器の記事に分けてまとめてあります。この記事は、そのうち低い側だけを並べ直したものです。

よくある質問

Q. チェロの最低音はどこですか

A. 開放弦の C2 です。ヴィオラの最低音 C3 のちょうど1オクターブ下にあたります。

Q. 楽器の“最低音”は、楽譜に書かれた音と同じですか

A. 同じとは限りません。コントラバスとコントラファゴットは、楽譜が実音より1オクターブ高く書かれます。この記事の表は、すべて実際に鳴る高さで書いています。

Q. 16Hz の音は聞こえるのですか

A. 一般に人の可聴域は20Hzから20,000Hzとされるので、その下になります。理想的な実験室の条件では、12Hz程度まで検出できるとされます。

まとめ

一番低い音が出るのは、32フィート管を持つ大型のパイプオルガンで、約16Hz の C0 です。オーケストラの楽器では、コントラファゴットが B♭0、テューバはペダル音域で少なくとも B♭0 あたり、コントラバスが E1 から C1 のあいだに最低音を持ちます。次に低音を聴くときは、“どこまで出るか”より、“どこで聞こえるか”に耳を向けてみてください。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。

公演・鑑賞教室のご相談、活動へのご賛同を

演奏会の企画や学校・施設向け鑑賞教室のご相談、活動へのご賛同まで、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ
← コラム一覧に戻る