コントラバスの音域は、4弦の楽器で最低音が E1、5弦や低音延長機構つきの楽器ではそれより低い B0〜C1 までです。ここで調べた数字がサイトごとに違って見えるときは、ほとんどの場合、楽譜に書かれた高さと実際に鳴る高さが混ざっています。コントラバスの楽譜は、実音より1オクターブ高く書かれるからです。
音の高さは、C4 を真ん中のドとして、実音(実際に鳴る高さ)で書きます。オーケストラで低音の土台になる楽器なので、テューバ奏者の私にとっても、同じ低音の線を受け持つ相手として身近な数字です。
コントラバスの音域:まず1分だけ
基本の楽器は4本の弦を張り、低いほうから E1・A1・D2・G2 に調弦します。隣り合う弦の間隔は完全4度で、ヴァイオリンやチェロの完全5度とは組み立てが違います。弦を押さえない状態(開放弦)の音が、その弦のいちばん低い音になります。
楽器の種類 | 最低音(実音) | 周波数の目安 | 調弦・仕組み |
|---|---|---|---|
4弦(標準) | E1 | 約41Hz | E1・A1・D2・G2 |
5弦(低い弦を足す型) | B0 | 約31Hz | B0・E1・A1・D2・G2 |
5弦(高い弦を足す型) | E1 | 約41Hz | E1・A1・D2・G2・C3 |
4弦+低音延長機構 | C1 | 約33Hz | 最低弦をE1からC1まで下げられる |
周波数は、A4 を 440Hz としたときの計算値です。5弦で足す弦は、E 線の下に低い B を加えるものが一般的で、まれに G 線の上に高い C を足す型もあります。低音延長機構は、最低弦の先を延ばして、半音4つぶん(E から C まで)低く下げられるようにした仕組みです。
楽譜は実音より1オクターブ高く書かれる
コントラバスは、実際に鳴る音より1オクターブ高い位置に音符を書く楽器です。低い音をそのまま書くと五線の下に加線がずらりと並び、読みにくくなるからです。開放弦の関係を表にすると、次のようになります。
開放弦 | 実音 | 楽譜に書かれる高さ |
|---|---|---|
最低弦 | E1 | E2 |
2本目 | A1 | A2 |
3本目 | D2 | D3 |
4本目 | G2 | G3 |
この書き方のせいで、コントラバスのパート譜は、チェロの楽譜とよく似た見た目になります。弦楽器の音域一覧で整理したとおり、コントラバスだけが4度で調弦され、書かれた音と鳴る音が違う弦楽器です。チェロの音域との関係は、チェロの記事で扱っています。
上の音域は、奏者と曲が決める
最低音は調弦で決まりますが、上の端は楽器では決まりません。オーケストラの楽譜では、E1 から G3 あたり(2オクターブと短3度)までを超えることは、あまり多くないとされています。ただ、独奏的な書き方では話が別で、プロコフィエフの「キージェ中尉」のように、D4 や E♭4 まで求める作品もあります。
上限の数字が資料ごとに違って見えるのは、どこまでを実用の範囲に含めるかで、線の引き方が変わるためです。当サイトの一覧では G4 付近を目安に置いています。どの数字も、楽器の限界というより、よく使われる範囲の目安として読んでください。
一段深く:同じ音を吹いても、楽譜の見た目は1オクターブ違う
私が吹くテューバは、実音のとおりにヘ音記号で書かれる楽器です。そのため、コントラバスとテューバが同じ低音の線を受け持つ場面では、鳴る高さは同じなのに、楽譜の上では1オクターブずれて見えます。パート譜を並べて見ると、同じ音を吹いているとは気づきにくいほどです。
テューバにとって E1 は、大型の B♭管で無理なく届く低さです。大きな B♭管には E♭1 の近くに強い共鳴があり、E1 から基音(ペダルトーン)の B♭ まで、3本のバルブだけで半音階をたどれるとされています。コントラバスの最低音とテューバの低い音域は、ちょうど重なる位置にあります。
低音の高さは、数字の上で同じでも、音の立ち上がりや響きの質が楽器ごとに違います。オーケストラでは、チェロとコントラバスが同じ低音の線を1オクターブ違いで弾く場面が多くあります。金管側の音域は金管楽器の音域一覧にまとめているので、コントラバスと見比べると、どの低音が重なっているのかが見えてきます。
よくある質問
Q. コントラバスの最低音は何ですか
A. 標準的な4弦では E1 です。低い弦を足した5弦では B0、低音延長機構つきの楽器では C1 まで下がります。オーケストラでどの楽器が使われるかは、楽団や曲によって違います。
Q. コントラバスだけ4度で調弦するのはなぜですか
A. 弦が長く、5度ずつ離して調弦すると、隣の弦へ移るまでに左手の位置を大きく動かすことになるためと説明されます。ヴァイオリンやチェロの5度調弦とは、楽器の大きさに合わせた組み立てが違います。
Q. 楽譜が1オクターブ高いのに、実音が低いのは間違いではないのですか
A. 間違いではなく、読みやすさのための約束事です。五線の下に加線が並ぶのを避けるために、あらかじめ1オクターブ高く書き、奏者がそのぶん低く弾きます。
まとめ
コントラバスの音域は、4弦で最低音 E1、5弦や低音延長機構つきで B0〜C1 までです。楽譜はその1オクターブ上に書かれ、上の端は奏者と曲によって変わります。次に低音の動きを聴くときは、コントラバスとテューバが同じ高さを支えている場面にも、耳を向けてみてください。
この記事を書いた人
小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。
