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コラム金管楽器の話

アルトホルンとホルンは何が違うのか|名前は似ていても、ベルの向きも調も別

アルトホルンとホルンは何が違うのか|名前は似ていても、ベルの向きも調も別

アルトホルンとホルンは、名前に同じ「ホルン」が付き、受け持つ音の高さもよく似た中音域の金管楽器です。日本の吹奏楽では、戦前はアルトホルンが標準的に使われていた時代もありました。

それでも、2つは別の一族の楽器です。違いの核心は、管の長さと調が違うことにあり、そこからベルの向き、楽譜の書き方、使う倍音の高さまでが変わってきます。ここでいうホルンは、オーケストラで使われる、いわゆるフレンチホルンのことです。

アルトホルンとホルンの違い:まず1分だけ

アルトホルンは、ユーフォニアムを小さくしたような形の楽器で、ベルは上を向き、ふつう3本のピストンバルブを持ちます。調はE♭(変ホ)で、イギリスでは「テナーホーン」と呼ばれます。サックスが考案したサクソルンという一族の、中音域を受け持つ楽器です。

ホルンは、丸く巻いた長い管に後ろ向きのベルを持ち、奏者は右手をベルに入れて構えます。調はF(ヘ)で、いまはB♭管と切り替えられるダブルホルンが主に使われます。

並べて見ると、ベルの向きも調も別です

比べる点

アルトホルン

ホルン

一族

サクソルン

ホルン(ナチュラルホルンの系統)

調

E♭管

F管(B♭管と切り替えるダブルホルンが主流)

記譜と実音

書いた音より長6度低く鳴る

書いた音より完全5度低く鳴る

ベルとバルブ

上向き・ピストン3本

後ろ向き・回転式

主な活躍の場

英国式ブラスバンド(3本)

オーケストラ、吹奏楽、室内楽

アルトホルンは、オーケストラの編成には入っていない楽器です。オーケストラではその位置をホルンが受け持ちます。ホルンがなぜ後ろ向きのベルに右手を入れて吹くのかは、ホルンのベルの向きを書いた記事で扱っています。

違いが生まれる理由:同じ高さを、短い管で鳴らす

日本語版ウィキペディアのアルトホルンの項は、使う音域はホルンに近いものの、管の長さはずっと短く、そのぶん低い次数の倍音を使う、と説明しています。英語版の「金管楽器の音の高さ」の項の表では、E♭のアルトホルンの管は約2m、ホルンは約3.7mです。

ホルンは長い管の高い倍音で、アルトホルンは短い管の低い倍音で、同じあたりの高さを鳴らしているということです。倍音の間隔が広い低い次数で吹けるぶん、隣の音に外れる心配はホルンより小さいと考えられます。ホルンが音を外しやすいと言われる理由は、倍音列から見た記事で書きました。

マウスピースは、意外にもそれほど遠くありません。英語版のテナーホーンの項によると、アルトホルンはふつう深い漏斗型のマウスピースを使い、オーケストラのホルン用に似ていて、縁がやや広い形です。

二つの楽器の時代:サクソルンと、日本の吹奏楽

ホルンはバルブの無いナチュラルホルンを祖先に持つ楽器で、19世紀の前半に楽譜をF管の書き方でそろえるのが標準になりました。アルトホルンは、その少し後に、新しい金管の一族として生まれています。

年

場所

できごと

19世紀前半

ヨーロッパ

ホルンの楽譜を、F管として書くことが標準になる

1840年代

パリ

サックスがサクソルンの一族を考案。英国のテナーホーンはその中音域の楽器から出た

戦前

日本

吹奏楽で、アルトホルンが標準的に使われる

昭和30年代以降

日本

アルトホルンがメロフォンに、さらにホルンへと置き換わっていく

アメリカでは、行進曲で知られるスーザが、音が良くないとしてサクソルンの楽器を減らし、ホルンを増やしたと伝えられます。日本の吹奏楽でいま中音域の金管といえばホルンなのは、こうした流れの先にあると言えます。

どんな場面で吹かれるのか

アルトホルンの主な場は、英国式のブラスバンドです。標準の編成では3本が並び、「ソロ・ホルン」「第1ホルン」「第2ホルン」と呼ばれます。和音の内側や、拍の裏を刻む役を受け持つことが多い楽器です。

コンサートバンドで、ホルンの代わりに使われることもあります。アメリカのマーチングバンドでは、かつてのアルトホルンの役を、ベルが前を向いたメロフォンが引き継ぎました。メロフォンはF管かG管で音域がホルンと重なるため、ホルンの代わりに使われることもありますが、マウスピースの持ち替えが難しく、ホルン奏者には好まれないこともあるとされます。

ホルンは、オーケストラ、吹奏楽、木管五重奏や金管五重奏まで、中音域の要として吹かれます。サクソルンの一族の中低音、ユーフォニアムとバリトンの違いはこちらの記事にまとめています。

一段深く:同じ楽譜を読むと、全音ずれる

楽譜を読む側から見ると、2つの楽器の差はいちばんはっきり表れます。アルトホルンは書いた音の長6度下で、ホルンは完全5度下で鳴ります。長6度と完全5度の差は全音1つ分なので、同じ音符を読むと、アルトホルンはホルンより全音低い音を出すことになります。

例えば、ト音記号の第3間のドを読むと、ホルンは実音のファ(F4)を、アルトホルンは実音のミ♭(E♭4)を鳴らします。ホルン奏者がアルトホルンのパートを吹くなら、書いてある音を全音下げて読み替える必要があります(ここは記譜の決まりからの計算です)。名前が似ているぶん、楽譜を取り違えると、曲全体が全音ずれて鳴ってしまう組み合わせです。

じつはホルンにも、E♭で吹かれていた時代があります。バルブが無かった頃のホルンは、替え管(クルーク)で管の長さを差し替え、E♭やD、Cなど多くの調で使われていました。楽譜はどの調でもドを基準に書かれ、替え管によって鳴る高さが変わる仕組みでした。いまのホルン奏者が読む「F管」という書き方は、その中から標準として残った一つです。

よくある質問

Q. アルトホルンとテナーホーンは同じ楽器ですか

A. 同じ楽器です。イギリスではテナーホーン、アメリカや日本ではアルトホルンと呼ばれます。ただしドイツでは、テノールホルンはもっと低いB♭管の別の楽器を指すので注意が必要です。

Q. オーケストラでアルトホルンが使われることはありますか

A. ほとんどありません。オーケストラの中音域の金管はホルンが受け持ち、アルトホルンは主にブラスバンドで使われます。

まとめ

アルトホルンとホルンは、名前が似ていても、サクソルンとホルンという別の一族の楽器です。管の長さ、調、ベルの向き、使う倍音が違い、同じ楽譜を読めば全音ずれて鳴ります。次にブラスバンドを聴くときは、上を向いたベルが3本並ぶ列を探してみてください。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。

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