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ヴィオラ・ダ・ガンバとチェロは何が違うのか|脚に挟んで弾くのに、別の一族の楽器

ヴィオラ・ダ・ガンバとチェロは何が違うのか|脚に挟んで弾くのに、別の一族の楽器

ヴィオラ・ダ・ガンバは、低音用のものならチェロと同じくらいの大きさで、弓で弦を鳴らし、脚で支えて弾く楽器です。見た目も構え方もそっくりなので、「昔のチェロ」だと思われがちです。

けれども2つは、一族をたどると別の筋に属しています。違いの核心は、その一族ごとの作りにあり、弦の数、調弦、フレットの有無、弓の握りにそれぞれ表れます。

ヴィオラ・ダ・ガンバとチェロの違い:まず1分だけ

「ヴィオラ・ダ・ガンバ」はイタリア語で「脚のヴィオラ」という意味で、脚で楽器を支えることに由来します。これに対して、腕で支える楽器は「ヴィオラ・ダ・ブラッチョ(腕のヴィオラ)」と呼ばれました。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロは、この腕の側の一族です。

つまりチェロは、脚の間に立てて弾くのに、「腕のヴィオラ」の一族の楽器です。ヴィオラ・ダ・ガンバは、ヴィオール族と呼ばれるもう一つの一族の楽器です。チェロ側の大きさと音域は、チェロの音域を扱った記事で整理しています。

並べて見ると、違いは5つに絞れます

比べる点

ヴィオラ・ダ・ガンバ

チェロ

弦の数

6本が基本(4〜5本や7本のものもある)

4本

調弦

4度を重ね、中ほどに長3度を挟む(低音用の6弦でD2・G2・C3・E3・A3・D4)

完全5度ずつ(C2・G2・D3・A3)

フレット

あり(ガット弦を巻いて結んだ可動式)

なし

弓の握り

手のひらを上に向けて握る(毛が手のひら側に来る)

弓の木の部分を手のひら側に寄せて握る

支え方

大きさに応じて、脚の上・脚の間・ふくらはぎで支える

エンドピンを床に立てて支える(バロック期のチェロはふくらはぎで支えた)

ガンバには、トレブル、テノール、バスなど7種類の大きさがあり、表は低音用のバスを念頭に置いています。表で目を引くのは調弦の行です。チェロはヴァイオリンやヴィオラと同じ5度の並びですが、ガンバは4度の並びに3度が挟まる、別の組み立てです。弦の数も2本違い、並べ方の発想が根本から違うことが分かります。

違いが生まれる理由:別々の系統で育った

ヴィオールは、ヴィウエラという楽器と深く結びついて生まれたとされます。フレットを持つ点はリュートやギターと同じで、4度と長3度で調弦する流儀は、ルネサンス期のリュートと同じものです。一方のヴァイオリン族は、フレットを持たず、5度で調弦する別の設計になりました。

チェロの直接の祖先は、バス・ヴァイオリンと呼ばれるヴァイオリン族の低音楽器です。ガンバの系統とは別筋です。

音の手ざわりにも、一族の違いが出ます。ヴィオールには張力の低いガット弦が張られ、初期の楽器には魂柱もなかったので、全体に静かで柔らかい声になると説明されます。

ガンバとチェロが生まれた時代:ルネサンスからバロックへ

ヴィオールは、15世紀末のスペイン、とくにバレンシアで生まれたとされます。ヴィウエラを弓で弾く工夫が出発点で、ヴェネツィアで独自に育ったとする説もあります。

ほぼ同じ1500年ごろ、イタリアにヴァイオリン族が現れます。

ヴィオールの教本として早い時期のものに、1542年から43年ごろにイタリアのシルヴェストロ・ガナッシが出した『レゴラ・ルベルティーナ』があります。

前の節で触れたバス・ヴァイオリンは、モンテヴェルディが1607年の『オルフェオ』で「バッソ・デ・ヴィオラ・ダ・ブラッチョ(腕のヴィオラの低音)」と記した楽器です。

活躍の場は分かれていきました。16〜17世紀のイギリスではヴィオールが爆発的な人気を呼び、バードやダウランドの時代には合奏曲が盛んに書かれました。フランスではルイ14世が低音のヴィオールを愛し、マレらが独奏曲を書いています。一方チェロは、1700年ごろにイタリアの奏者が北ヨーロッパへ広め、既存のバス・ヴァイオリンの多くが切り詰められてチェロになりました。

やがて演奏会場が大きくなると、鋭く通る音のヴァイオリン族が好まれ、ヴィオールは衰退します。1787年に最後のガンバの巨匠とされるカール・フリードリヒ・アーベルが亡くなると、ガンバのための曲はほとんど作られなくなりました。

どこで出会えるのか:バッハの使い分け

バッハは、同じ曲のなかでガンバとチェロを使い分けています。「ブランデンブルク協奏曲 第6番」の編成は、ヴィオラ・ダ・ブラッチョ2、ヴィオラ・ダ・ガンバ2、チェロ、ヴィオローネ、チェンバロです。この曲集がまとめられた1721年には、ガンバはすでに古めかしい楽器だったとされます。

ガンバのための曲もあります。バッハにはガンバとチェンバロのための3曲のソナタ(BWV1027〜1029)があり、7弦のガンバは「マタイ受難曲」でも使われました。フランスでは、マラン・マレが1686年から1725年にかけて、『ヴィオール曲集』を5巻出版しています。

一段深く:4度と3度が、2オクターブを作る

音響設計の目で見ると、調弦の違いは、音の高さをどう積み上げるかという設計の違いです。低音用の6弦のガンバは、低い弦から順に、4度、4度、長3度、4度、4度と重ねます。半音の数で数えると5、5、4、5、5で合計24になり、いちばん低い弦とトップの弦は、ちょうど2オクターブ離れる計算です(D2とD4)。

チェロは、完全5度(半音7つ)を3回重ねて、C2からA3までの21半音に収めています。ガンバは弦を増やして間隔を詰め、チェロは弦を減らして間隔を広げた形です。チェロの調弦と音域の関係は、弦楽器の音域一覧でも整理しています。

フレットも、音程の作り方を変えます。ガンバのフレットは移動できるので、位置をずらして音律を調整できます。フレットを成す2本のガット弦を少しずらして、少し高い音と少し低い音を作り分ける方式もあります。フレットのないチェロでは、音程は指の位置だけで決まります。

よくある質問

Q. ヴィオラ・ダ・ガンバはチェロの先祖ですか

A. いいえ。チェロの直接の祖先はバス・ヴァイオリンで、ガンバとは別の一族です。ただ、16世紀のイタリアでは2つの一族が並行して発達し、見た目も構え方も似ているため、同じ系統に見えがちです。

Q. ヴィオラ・ダ・ガンバは今も演奏されていますか

A. はい。19世紀末にアーノルド・ドルメッチらが注目し直し、20世紀に古楽の愛好家のあいだで復興しました。左手の運指はチェロに近いとされますが、高いポジションでも指板の上に親指を置かない点は違います。

まとめ

ヴィオラ・ダ・ガンバとチェロは、脚で支えて弾く点がよく似ていますが、属する一族が違います。ガンバは6弦が基本で、4度と3度で調弦し、フレットを持ちます。チェロは4弦で、5度で調弦し、フレットはありません。次にバッハの曲を聴くときは、どちらの楽器が響いているのか、耳を傾けてみてください。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。

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