トランペットとコルネットは、同じB♭管なら音域がほとんど変わらない、よく似た金管楽器です。違いは音域ではなく、管の形とマウスピースにあり、そのせいで音色の手ざわりが変わります。
見た目がそっくりなので、「結局どっちを吹いても同じでは」と思われがちです。けれども使われる場面ははっきり分かれていて、使い分けには理由があります。
トランペットとコルネットの違い:まず1分だけ
一般に、トランペットは管の多くが同じ太さの円筒状で、最後にベルが大きく開いていると説明されます。コルネットは、管の太さが先に向かって少しずつ広がる円錐状の部分が多く、全体がコンパクトに巻かれています。同じB♭管なら、管の全長はほぼ同じで、巻き方が違うぶん、見た目の大きさも違って見えます。
コルネットは、19世紀前半のフランスで、ポストホルン(郵便ラッパ)にバルブを付けたものが原型とされます。やがて独自の楽器として広まり、バルブ付きのトランペットとは別の道をたどりました。
並べて見ると、違いは4つに絞れます
比べる点 | トランペット | コルネット |
|---|---|---|
管の形 | 円筒状の部分が長く、ベルが大きく開く | 円錐状の部分が多く、全体がコンパクト |
マウスピース | カップが比較的浅い傾向 | カップが深く、V字に近い傾向 |
音色 | 輝かしく、明るく通る | 丸く、柔らかい |
音域(B♭管) | 同じ範囲で書かれる | |
主な活躍の場 | オーケストラ、吹奏楽、ジャズ | ブラスバンド(英国式)、一部の管弦楽曲 |
この表で大事なのは、音域が同じ行です。コルネットは「小さいから高い音が出る楽器」ではなく、同じ音域を、別の音色で吹くために選ばれる楽器だということが分かります。
音色の違いは、管の形から生まれる
金管楽器の音色は、管がどれだけ円筒に近いか、円錐に近いかで変わるとされます。一般に、円筒の部分が長いほど高い倍音がよく響いて明るい音になり、円錐の部分が多いほど高い倍音が控えめになって丸い音になる、と説明されます。トランペットが輝いて聞こえ、コルネットが柔らかく聞こえるのは、この違いが大きく効いています。
マウスピースも、その差を後押しします。浅いカップは唇がよく振動して明るい音に、深いカップは音が丸く落ち着く方向に働きます。コルネットのマウスピースは深いカップが多いので、管の形と合わせて、柔らかい音色が作られます。
ただし、これはあくまで傾向です。同じコルネットでも、奏者や楽器、マウスピースの選び方で、かなり明るい音も出せます。
どんな場面で使い分けられるのか
英国式のブラスバンドは、コルネットが旋律を担当する編成で、トランペットは基本的に使いません。コルネットの丸い音が、バンド全体の音色の統一感を作るためです。
日本の吹奏楽やオーケストラでは、トランペットが主流です。吹奏楽の楽器配置でも、トランペットは金管の旋律と輪郭を受け持つ位置にいます。一方で、19世紀のフランスなどの管弦楽曲には、コルネットを指定する作品があります。たとえばベルリオーズの「幻想交響曲」は、トランペットとは別にコルネットのパートを持っています。その場合、奏者はコルネットを使うか、トランペットで代用するかを、作品の様式や指揮者との相談で決めることになります。
一段深く:同じ長さの管でも、音は別物になる
音響設計の目で見ると、トランペットとコルネットは、管の長さを揃えたまま音色だけを変えた、きれいな比較対象です。長さが同じなら基音と倍音の高さは同じで、音の高さの出方は変わりません。変わるのは、その倍音の強さの並び方、つまりスペクトルの形です。
テューバ奏者として思うのは、この違いが金管全体の設計の基本でもあることです。ユーフォニアムやテューバは円錐状の管が主体で、丸く豊かな音を出しやすい作りになっています。トランペットとコルネットの関係は、低音楽器の世界で起きていることの縮図のように見えます。
マウスピースの深さと音の明るさの関係は、カップが深いと暗い音になるのかでも取り上げています。楽器ではなく、マウスピースのカップだけを変えたときに何が変わるかを見ると、この記事の「管の形」の話が立体的に見えてきます。
よくある質問
Q. トランペット奏者がコルネットを吹くことはありますか
A. あります。指使いが同じなので、持ち替えること自体は難しくありません。ただ、吹き込みの感覚やマウスピースが変わるため、音色と音程の感覚を合わせ直す時間は必要になります。
Q. コルネットは初心者向けの楽器ですか
A. 小さくて扱いやすいと言われることはありますが、初心者向けと決まっているわけではありません。ブラスバンドの世界では、プロの奏者が活躍する本格的な楽器です。
まとめ
トランペットとコルネットは、同じB♭管なら音域はほとんど同じで、違いは管の形とマウスピースにあります。トランペットは輝かしく、コルネットは丸く柔らかいのです。この音色の違いが、オーケストラとブラスバンドでの使い分けにつながっています。次に聴くときは、同じ旋律でも、音色の手ざわりに注意してみてください。
この記事を書いた人
小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。
