イデー・フィクス(idée fixe)
固定楽想は、一つの旋律が楽章をまたいで繰り返し現れる手法です。ベルリオーズの「幻想交響曲」(1830年初演、5楽章)では、恋する女性の幻影をあらわすとされる旋律が、全5楽章に登場します。ふつうの交響曲では主題は楽章の中で完結しますが、この曲では一つの旋律が最後まで出演し続けます。
旋律は毎回同じ形では現れません。速さ、調、担当する楽器、伴奏の性格が場面ごとに変わります。第1楽章で本来の姿で示された旋律は、第4楽章の終わりで強烈な全奏に断ち切られ、第5楽章では装飾をまとい、品位を失った姿で戻ります。旋律そのものより、旋律の扱われ方が物語を運びます。
よくある誤解
「固定」という訳語から、同じ旋律が同じ形のまま繰り返されるものと思われがちです。しかし idée fixe はフランス語で「頭から離れない考え(強迫観念)」を指す言葉で、固定されているのは旋律の形ではなく、主人公につきまとう恋人の面影のほうです。旋律そのものは、楽章ごとに速さや調、担当する楽器を変えて現れます。第1楽章の旋律を一つ耳に残しておけば、その変わり方を追うだけで物語の筋をたどれます。
詳しく読む
「幻想交響曲」と、全楽章を貫く一つの旋律別名・表記ゆれ: イデーフィクス / イデー・フィクス
関連する用語
交響曲
オーケストラ全体が主役の、複数の楽章からなる大規模な曲です。多くは4つの楽章で組み立てられます。
楽章
大きな作品を構成するひとまとまりの区切りです。速さと性格を変えて並べ、時間を設計します。
ロマン派
おおよそ1820〜1900年の音楽様式です。市民の聴衆に向けて、個人の感情を強く表現しました。
オーケストラ
弦楽器を土台に、木管・金管・打楽器が加わる大編成の合奏団で、吹奏楽との違いは弦の有無です。