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声種とは?ソプラノからバスまで6区分の音域と違い

声種とは?ソプラノからバスまで6区分の音域と違い

オペラのプログラムを開くと、配役表に「ソプラノ」「テノール」「バス」という言葉が並んでいます。なんとなく「声が高い人からソプラノ、低い人がバス」という順番だろうと思っていませんか。実際、そう思っている方は多いはずです。

低音を担当するテューバ奏者として、私はこの並びを少し違う角度から見ています。声種(こえしゅ)は、ただ「高い声が出るかどうか」で決まるものではありません。

声種とは? ― まず1分だけ

声種とは、歌手の声を音域と声の性質によって分類したものです。女性は高い方からソプラノ・メゾソプラノ・アルト(コントラルト)の3区分、男性はテノール・バリトン・バスの3区分。合わせて6区分が基本の型です。オーケストラに高音の楽器と低音の楽器がいるように、オペラの舞台にも高い声から低い声まで、6段階の役割があると考えるとイメージしやすいはずです。

この6区分は、オペラだけのものではありません。合唱でおなじみのソプラノ・アルト・テノール・バスというパート分けも、同じ考え方の上にあります。まず全体を並べておきます。

声種

おおよその音域

声の性質

オペラでの役どころの型

ソプラノ

おおよそ C4〜C6

明るく張りのある高音

若い女性の主役

メゾソプラノ

おおよそ A3〜A5

中音域が厚く、語りが乗る

もう一人の女性・ズボン役

アルト(コントラルト)

おおよそ F3〜F5

落ち着いた低音

年配の女性・占い師

テノール

おおよそ C3〜C5

高く、遠くまで通る

恋する若い男性の主役

バリトン

おおよそ A2〜A4

中庸で、言葉が立つ

主人公と対立する側

バス

おおよそ E2〜E4

重く沈み、その場を締める

父・王・僧・悪魔

C4 が中央のドです。音域はあくまで目安で、同じ声種でも人によって上下しますし、隣り合う声種の音域は大きく重なっています。境目に、はっきりした線は引けません。だから「どこまで高い音が出るか」だけでは、声種は決まらないのです。

声種は「最高音が出せるか」では決まらない

ここからが本題です。声種を決めているのは、声帯の長さと厚みという物理的な条件——ここは楽器と同じで、私のテューバも全長5メートルを超える管を折りたたむことで低い音を出しています。管が長く太いほど低い音が出やすいのと同じ理屈で、声帯が長く厚い人ほど低い声が出やすくなります。

ただし、声種の判定は「今日、高い音が出るかどうか」だけでは決まりません。歌手にとって大事なのは、無理なく響き、その人の声がいちばん豊かに鳴る音域——専門的にはテッシトゥーラと呼ばれる、声が「暮らしやすい」帯域です。音大生の中には、10代のうちはソプラノとして歌っていても、20代で声が成熟するにつれてメゾソプラノだったと分かる人がいます。一度きりの声変わりではなく、声は年月をかけて自分の場所を見つけていきます。「声の高さは生まれつき決まっている」と思い込むと、この過程を見落としてしまいます。

悪役はなぜ低い声が多いのか

声種が決まる仕組みを押さえたところで、オペラの配役を見てみると面白い傾向に気づきます。年齢を重ねた人物・権威を持つ人物・悪役や不吉な存在には、低い声が割り当てられやすいのです。

グノー「ファウスト」で魂を取り引きする悪魔メフィストフェレスはバス。ヴェルディ「リゴレット」で殺し屋として登場するスパラフチーレもバス。プッチーニ「トスカ」で主人公を追い詰める警視総監スカルピアはバリトン。一方、恋する若い主人公は高い声で描かれることが多く、「椿姫」のヴィオレッタとアルフレード、「ラ・ボエーム」のミミとロドルフォは、それぞれソプラノとテノールの組み合わせです。年老いた占い師や母親役(「トロヴァトーレ」のアズチェーナ、「仮面舞踏会」のウルリカ)にはメゾソプラノやアルトが割り振られます。

もちろん例外もあります。「魔笛」で主人公たちの前に立ちはだかる夜の女王は、オペラの中でもとりわけ高いソプラノです。低い声イコール敵役という単純な法則ではなく、あくまで作曲家がよく選ぶ「傾向」だと捉えるのが正確です。

声域という設計図 ― なぜ作曲家はこの割り振りを選ぶのか

ここで一段階、視点を変えてみます。作曲家がなぜこの傾向を選ぶのかというと、声の高さそのものが、言葉より先に人物像を伝える情報だからです。客席にいる私たちは、歌詞を聴き取るより早く、声の重さで「この人は年上だ」「この人は危険だ」と感じ取っています。オーケストラで低音楽器が全体の土台を支える役割を担うのと同じように、低い声は舞台の上で「重み」や「その場を締める力」を担っている——私はこれを、作曲家が声域を使って人物像を設計していると見ています。目的(観客に一瞬で人物像を伝えること)から逆算して、手段(どの声種に歌わせるか)を組み立てています。楽譜の指定は、単なる音域の指示ではなく、その人物をどう聞かせたいかという設計なのです。

よくある質問

Q. 声種は自分で選べるものですか?

A. 声帯の長さ・厚みという土台は生まれ持ったものですが、正確な声種は訓練を重ね、声が安定してから指導者が音色や響きやすい音域を聴いて見極めます。10代の判定と20代の判定が変わることも珍しくありません。

Q. カウンターテナーや「ズボン役」とは何ですか?

A. カウンターテナーは、裏声(ファルセット)を鍛えて男性がソプラノやアルトに近い高さで歌う声種です。もともとは去勢歌手(カストラート)が担っていた役を、現代はカウンターテナーが受け持つことがあります。「ズボン役」は、若い男性の役をメゾソプラノが演じる伝統で、「フィガロの結婚」のケルビーノや「ばらの騎士」のオクタヴィアンが代表例です。6区分の外側にも、こうした声の使い方が広がっています。

まとめ

声種は、生まれ持った声帯の条件を土台にしながら、時間をかけて見つかっていくものです。そしてオペラの配役は、その6区分を使って、観客に人物像を一瞬で届けるための設計図でもあります。全部の役の声種を覚えなくていい。まずは今度観る(聴く)オペラで、悪役や年配の役にどんな声が割り当てられているか、少しだけ耳を澄ませてみてください。

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この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。

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