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合唱の4声(SATB)はどう分かれるのか|オペラの声種との違い

合唱の4声(SATB)はどう分かれるのか|オペラの声種との違い

合唱のプログラムを開くと、パートは決まって「ソプラノ」「アルト」「テノール」「バス」の4つです。ところが同じ人がオペラの配役表に載ると、女声に「メゾソプラノ」が増え、男声にも「バリトン」が立っています。同じ声を扱っているのに、合唱では4つ、オペラでは6つに分かれる――なぜでしょうか。

LFコンサートで演奏会を主催する側から見ると、この数の違いは呼び名の問題ではありません。合唱とオペラでは、そもそも「声を何のために分けているか」という設計の目的が違うのです。

合唱の4声とは:まず1分の地図

合唱の4声とは、ソプラノ(女声高音)・アルト(女声低音)・テノール(男声高音)・バス(男声低音)の4パートのことです。英語の頭文字を取って「SATB」と呼びます。混声合唱の基本はこの4声部で、同じ和音を上から下まで積み上げて響かせます。8声・12声に分かれる曲もありますが、土台はこの4つの積み重ねと考えて差し支えありません。

合唱の4声とオペラの声種、分類の目的が違う

合唱の4声とオペラの声種は、同じ「声の高さ」を扱っていても、分類の目的が違います。合唱の4声は、和音を4つの声部に配るための機能的な区分です。ソプラノが旋律を運び、アルトとテノールが内声で和音を厚くし、バスが土台を支える――役割で分けています。一方オペラの声種は、役に対する声のキャラクターを表す分類です。同じ「高い女声」でも、可憐な娘役を歌うならソプラノ、恋に悩む王妃のような重みのある役ならメゾソプラノというように、音域だけでなく声質や演技領域まで含めて呼び分けます。

区分

何のための分類か

人数の考え方

同じ人が別の名前で呼ばれる例

合唱の4声(SATB)

和音を4つの声部に配る、機能的な区分。ソプラノが旋律、アルトとテノールが内声、バスが土台を担う

パートの人数バランスで音量と音色の均衡を取る。理想は各パート同程度だが、実際は集まった声の性別・人数に左右される

合唱で「アルト」を歌う人が、ソロでは「メゾソプラノ」と呼ばれることがある

オペラの声種(6区分ほど)

役に対する声のキャラクターを表す区分。ソプラノ・メゾソプラノ・アルト(コントラルト)・テノール・バリトン・バスなど、音域と声質と演技領域で分ける

各声種に何人必要かは作品の配役次第。1人のソプラノが主役を歌うこともあれば、同じ声種の歌手が複数の脇役に分かれることもある

オペラで「バリトン」の役を歌う人が、合唱に入ると「バス」パートで歌うことがある

オペラの声種がどう決まっていくかは、オペラの声種とはで詳しく書きました。合唱の4声と読み比べると、「同じ声の高さでも、分ける目的が変われば区分の数まで変わる」ことがはっきり見えてきます。こうした用語のつまずきは合唱やオペラに限りません。まとめて確認したい方はクラシック音楽の用語をやさしく解説もあわせてどうぞ。

なぜ分け方が違うのか:目的から設計しなおす

デザイン思考の言葉を借りると、合唱の4声とオペラの声種は「同じ音域を、違う目的から設計しなおした結果」だと私は見ています。合唱が欲しいのは、大勢の声を積み上げてひとつの和音を鳴らす仕組みです。だから声は「声部」という機能に還元され、4つで足ります。

オペラが欲しいのは、舞台の上の一人ひとりの人物です。だから声は「役のキャラクター」として扱われ、6つに枝分かれします。分類の数が違うのは、声そのものが違うからではなく、何を実現したいかという設計目的が違うからなのです。

LFコンサートを主催する立場で演奏会を組み立てていると、この理屈どおりにいかない現実にもよく出会います。アマチュア合唱では、音域よりも人数バランスでパートが決まることが少なくありません。声域的にはソプラノが向いている人でも、アルトが足りなければアルトに回ります。理想の配分と現実の配分は、いつも一致するわけではないのです。プロの声種分類が「その人の声質にもっとも合う役」を探す作業だとすれば、アマチュア合唱のパート分けは「今ある声で、どう和音を成立させるか」という、もうひとつの設計問題を解いている――私にはそう見えています。

こうした違いを、全部覚える必要はありません。合唱を聴くときは4つ、オペラを観るときは声のキャラクターだけ意識すれば十分です。クラシックが“難しそう”に感じる理由の多くは、実はこうした区分の多さそのものにあります。詳しくはクラシックはなぜ「敷居が高い」と思われるのかでも触れました。

よくある質問

Q. 合唱でソプラノとアルトの人数が違うのはなぜですか。

A. パート間の音量バランスを取るためです。旋律を担うソプラノは厚めに、内声を支えるアルトやテノールは少し薄めに編成される合唱団が多いとされますが、団によって事情は様々です。人数が集まりにくいパートに合わせて全体の編成を調整することもあります。

Q. メゾソプラノは合唱では何パートを歌いますか。

A. 多くの場合、ソプラノかアルトのどちらかに入ります。声域が高めのメゾソプラノならソプラノ、低めならアルトで歌うのが一般的で、合唱の楽譜自体が女声をソプラノとアルトの2声にしか分けていないためです。

まとめ

合唱の4声とオペラの声種は、同じ人の声を扱いながら、まったく違う目的から設計された分類です。合唱は和音を配るための4声、オペラは役を表すための声種。どちらが正しいということではありません。次にプログラムや配役表を眺めるときは、その数字の違いに「何のための分類か」を重ねてみてください。声の聴こえ方が、少しだけ変わってくるはずです。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。

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