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メゾソプラノとアルトは何が違うのか|「間の声」がいちばん説明されない

メゾソプラノとアルトは何が違うのか|「間の声」がいちばん説明されない

「私の声、ソプラノより低いみたいなんです。合唱団に入るなら、アルトですか?」——学生時代からいろいろな合唱団やオペラの現場を見てきましたが、この質問、驚くほどよく聞かれます。答えは「たぶん、メゾソプラノです」であることが多いのですが、なぜそう言えるのか、きちんと説明できる人は意外と少ないのです。

オーケストラでオペラの伴奏をする側から見ると、メゾソプラノとアルトの境目は、音域表の数字よりも“役どころ”で説明したほうが、ずっと腑に落ちます。

メゾソプラノとアルト、まず1分だけ

女性の声はふつう、高い順にソプラノ・メゾソプラノ・アルト(コントラルト)の三段に分けられます。ソプラノは最も高く軽やかな声、アルトは最も低く重みのある声。メゾソプラノはその間に置かれる声で、名前どおり「メゾ=中間の」という意味です。声の種類そのものについては、こちらの記事で仕組みから説明していますので、ここでは「間の声」に絞ります。

音域より“音色”と“役どころ”で見分ける

ここが、検索してもなかなか答えが出てこない部分だと思います。メゾソプラノとアルトの違いを音域だけで説明しようとすると、実はそれほど大きな差になりません。おおよその目安として、メゾソプラノは低いラのあたりから高いラのあたりまで、アルトはそこからさらに数音低いところまでを得意にする声、といった程度の違いです。しかも実際の音域は歌手ごとの個人差が大きく、この数音の差だけで名乗りが決まっているわけではありません。

むしろ違いを生んでいるのは、声の質感と、オペラで割り振られる役どころです。次の表にまとめます。

メゾソプラノ

アルト(コントラルト)

音域の目安

おおよそラ〜ラの2オクターブ程度

メゾソプラノよりさらに低い方に寄る

声の質感

芯があり、ふくよかで温かい

重心が低く、地声に近い厚み

オペラでの役どころ

主役級も多い。情熱的な女性、女友達、ライバル役

脇役が中心。乳母・老婆など、物語を支える年長の役

合唱でのパート

アルトパートの上を担うことが多い

アルトパートの土台を支える

有名な役の例

ビゼー「カルメン」の主役カルメン

出番は少ないが重要な脇役に配置されやすい

表の「役どころ」の欄が、いちばんの分かれ目です。メゾソプラノは主役級の女性——恋する女性、嫉妬する女性、決断する女性——を任されることが多く、「カルメン」のように作品の顔になる役も少なくありません。一方アルトは、出番こそ少なくても物語の転換点を握る、重みのある脇役に配置される傾向があります。ヴェルディ「椿姫」でも、主役ヴィオレッタを陰から支える友人フローラはメゾソプラノが歌う役どころで、物語全体の中で主役を引き立てる「もう一人の女性」を担っています。

ズボン役:メゾソプラノが男性を演じる理由

メゾソプラノを語るうえで欠かせないのが、ズボン役(パンツ役)です。若い男性の役を、女性の歌手が演じる伝統のことです。モーツァルト「フィガロの結婚」の小姓ケルビーノ、リヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」の青年貴族オクタヴィアンが、その代表例としてよく挙げられます。

なぜ女性が男性を演じるのでしょうか。歴史的には、去勢歌手(カストラート)が姿を消した後、少年や青年の透明感のある声域を、成人男性のテノールやバリトンでは再現しづらかった事情があると一般には説明されています。メゾソプラノの声は、ソプラノほど華やかすぎず、テノールほど重すぎません。ちょうど、変声期前後の少年や、大人になりきっていない青年の“頼りなさ”を音色で表現できる位置にあるのです。衣装や演技だけでなく、声そのものが「まだ大人になりきっていない男性」を設計しているわけです。

一段深く:「低い声」ではなく「置き場所」で設計されている

音響設計を学んだ立場から見ると、声種の分類は「声の高さを測る物差し」というより、「オーケストラという全体の中に、どこへ声を置くか」という設計の結果に近いと感じます。作曲家はソプラノを主役の位置に置き、メゾソプラノを主役の隣か対岸に置き、アルトを土台に置きます。声そのものの高さより、全体の中での役割から逆算して配置しているのです。

私はテューバ奏者として、オーケストラの一員から歌手を支える立場に回ることがあります。そこでいつも感じるのが、メゾソプラノの中音域は、オーケストラの中ではヴィオラやホルンとちょうど同じ帯域に重なるということです。その帯域を弦や管が厚く鳴らしてしまうと、声はあっさり埋もれてしまいます。だから作曲家は、メゾソプラノが歌う場面では意図的にオーケストレーションを薄くしたり、他の声部を休ませたりして、声の通り道を確保します。声だけを見ていては分からない、器楽と声のせめぎ合いが、この「間の声」には常についてまわっているのです。

よくある質問

Q. アルトとコントラルトは同じものですか?

A. ほぼ同じ声域を指しますが、使われる場面が違います。合唱では「アルト」、オペラや独唱の文脈では「コントラルト」と呼ばれることが多く、呼び方の違いであって声そのものが別物というわけではありません。

Q. メゾソプラノは主役になれないのですか?

A. なれます。表でも触れた「カルメン」のように、メゾソプラノが題名役・主役を務める作品は数多くあります。「脇役の声」と思われがちですが、実際にはもっと幅の広い役どころを担っています。

まとめ

「ソプラノより低い声」を探して検索した方に伝えたいのは、メゾソプラノとアルトの違いを、音域の数音差で覚えなくていいということです。まず見てほしいのは、その声がオペラの中でどんな役どころを与えられているかです。主役の隣に立つ声なのか、物語を支える声なのか、あるいは男性を演じる声なのか。次にオペラを聴くときは、音の高さより先に、その声が舞台の上でどこに“置かれて”いるかを追ってみてください。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。

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