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クラシックは“知識がいる”音楽じゃない|初心者におすすめの名曲

クラシックは“知識がいる”音楽じゃない|初心者におすすめの名曲

「クラシックを聴くには、作曲家や時代様式を知らないといけない」——そう思って、名曲リストを開いた瞬間に閉じてしまったことはありませんか。私はテューバ奏者として舞台に立つたびに、客席の空気からそれを感じます。知識がないと恥ずかしい、という空気です。

演奏する側から言わせてください。私たちが舞台で音を出すとき、聴く人の予備知識は関係ありません。クラシックは、知識がいる音楽ではありません。難しい理論は後回しでいい、という前提で読んでください。

「名曲」とは何か:まず1分だけ

クラシックの世界で「名曲」と呼ばれる作品には、長い年月を生き残ってきたという共通点があります。初演から100年、200年たっても演奏され続けているのは、聴いた人の心を動かす何かがそこにあるからです。ジャンル(交響曲・協奏曲・バレエ音楽・オペラ・ピアノ独奏など)ごとに代表作を1曲ずつ知っておくと、次にどれを聴くか迷いません。ここから先が本題です。

ジャンル別・迷わず入れる名曲

交響曲:ベートーヴェンの「運命」

ベートーヴェンの交響曲第5番ハ短調(1808年初演、通称「運命」)は、冒頭の「ダダダダーン」を知らない人はいないはずです。この4つの音のモチーフが全楽章の随所に姿を変えて現れます。知らずに聴いても十分に胸を打ちますが、知っていると聴こえ方がもう一段深くなります。交響曲というジャンルそのものについては、交響曲は“全部わかろう”としないで詳しく書きました。

協奏曲:ヴィヴァルディの「四季」

ヴィヴァルディの「四季」(1725年出版)は、独奏ヴァイオリンが情景を描く協奏曲です。「春」の冒頭は鳥のさえずりを模した音型で、聴くだけで景色が浮かびます。協奏曲は「独奏者の見せ場」というイメージが強いですが、オーケストラとの掛け合いこそが聴きどころ。このあたりは協奏曲は“独奏者だけ”の曲じゃないで書いています。

バレエ・管弦楽:チャイコフスキーとホルスト

チャイコフスキーの「くるみ割り人形」組曲(1892年初演)は、クリスマスの定番として世界中で演奏されています。「花のワルツ」や「金平糖の踊り」は、初めて聴いてもメロディーが耳に残るはずです。もう一曲挙げるなら、ホルストの組曲「惑星」(1916年作曲)から「木星」。壮大な中間部の旋律は、聴いたことがある人がほとんどでしょう。

オペラの名旋律:プッチーニの「誰も寝てはならぬ」

オペラは敷居が高いと感じる人も多いのですが、旋律だけ切り取って聴くと印象が変わります。プッチーニのオペラ「トゥーランドット」(1926年初演)のアリア「誰も寝てはならぬ」は、テノール歌手の代表曲として単独でも演奏される機会が多い曲です。ストーリーを知らなくても、旋律の高まりだけで十分に感情が動きます。

ピアノ独奏:ベートーヴェンとショパン

一人で完結する分、静かに聴きたい夜に向くのがピアノ独奏曲です。ベートーヴェンのピアノソナタ第14番「月光」(1801年作曲)の第1楽章は、単音に近い旋律が静かに続くだけなのに、聴くほどに引き込まれます。ショパンのノクターン第2番(1830年代初頭作曲)も、初めてクラシックを聴く人に薦めて外れたことがありません。

一段深く:「入り口」は設計するものです

ここまで挙げた曲に共通するのは、「代表作から入る」という設計です。私は音響設計と音楽マネジメントを学んだ経験から、ものごとを今ある前提を疑って目的から組み直す——デザイン思考で見る癖があります。名曲ガイドの多くは作曲家の年代順や重要度順に並んでいますが、それは作り手側の都合の並べ方です。聴く人の目的は「今日、心地よく聴きたい」という一点なので、ジャンルという“気分の入り口”から選べる方が自然だと考えています。

舞台袖で出番を待つとき、私はいつも客席の空気を感じています。身構えて座っている人と、リラックスして座っている人とでは、同じ演奏の届き方がまるで違います。名曲の並べ方ひとつで、その日の入り口の空気が変わります。それが、私がこのリストをジャンル別に組んだ理由です。

よくある質問

Q. どの曲から聴けばいいですか?

A. 順番はありません。上のジャンルの中で、説明を読んで「今日の気分に近い」と感じた一曲から始めてください。気に入ったら同じ作曲家の別の曲へ、それも迷ったら別のジャンルへ——好きな入り口を広げていく形で十分です。

Q. 配信・CD・生演奏、どれで聴くのがいいですか?

A. まずは配信で気軽に触れてみるのがおすすめです。気に入った曲が見つかったら、生演奏に触れてみてください。オーケストラの音は、スピーカーとは空気の震え方が違います。国内の演奏会情報はLF CLASSICのポータルで無料で調べられます。

まとめ

クラシックは、知識がいる音楽ではありません。ジャンルごとに代表作を1曲ずつ知っておけば、それだけで十分な入り口になります。まずは今日の気分に合うジャンルから、1曲だけ聴いてみてください。気に入った曲があれば、指揮者は“振るだけ”じゃないのような個別記事やブログ一覧から、もう一歩深く踏み込んでみてください。

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この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。

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