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交響曲とは?“全部わかろう”としない、いちばん楽しい聴き方

交響曲とは?“全部わかろう”としない、いちばん楽しい聴き方

コンサートのチラシに「交響曲」とあると、身構えてしまう人は多いはずです。40分も座って、全部理解できるだろうか。テンポが変わるたびに置いていかれないだろうか——そう思っていませんか。

テューバ奏者として舞台の上からこの曲を鳴らしてきた私から言うと、交響曲は「全部わかろう」とすると、むしろ楽しめなくなる曲です。

交響曲とは? ― まず1分だけ

交響曲とは、オーケストラ全体で演奏する、複数の楽章からなる大規模な器楽曲です。多くは4つの楽章で構成され、独奏者ではなくオーケストラそのものが主役になります。定義としては、これで十分です。大事なのはここから先、「なぜ4つに分かれているのか」という話です。

4つの楽章は、気分の違う4つの場面です

古典派の時代、ハイドンやモーツァルトが固めた型では、交響曲の楽章はだいたいこう並びます。速く(第1楽章)→ゆっくり(第2楽章)→舞曲風に軽やかに(第3楽章)→速く華やかに(第4楽章)。これは偶然の並びではありません。緊張と弛緩を交互に置くことで、聴き手の集中がひとつの山をずっと登り続けなくて済むように設計されています。

私はこれを、1本の長い映画というより、短編を4本つないだオムニバスに近いと捉えています。ベートーヴェンの交響曲第5番、通称「運命」は、冒頭の短い動機(「ジャジャジャジャーン」)が全楽章に姿を変えて戻ってくる作りで、場面ごとの再会を楽しむのに向いています。ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」は、第2楽章の旋律が後年「家路」として親しまれるほど独立した名場面になっています。どちらも、ある楽章だけ強く記憶に残っても、それで十分なように作られているのです。

舞台の上での実感を言うと、テューバのような低音は交響曲の土台にあたります。第1楽章で重心を低くどっしり支えていた低音が、第2楽章では音量を落として輪郭だけをそっと添える側に回ります。指揮者の一振りで役割そのものが切り替わる瞬間を、私は本番のたびに感じています。聴いている側の集中の強弱も、これと同じでいいのです。ずっと同じ姿勢で聴き続けなくていいのです。

第3楽章にメヌエットやスケルツォという舞曲由来の楽章が置かれているのも、理由のない慣習ではありません。もともと宮廷の踊りの拍子だったものを、あえて交響曲の中に残しているのです。ここでリズムに合わせて軽く体を揺らしたくなったら、それは正しい反応です。踊るための拍子として書かれているのですから。

「全部わかろう」を手放すと、何が起きますか

デザイン思考の考え方に、目的から設計しなおすという発想があります。交響曲を「聴き逃したら失礼」なものとして扱うのをやめ、「気分の違う4場面を順番に味わうもの」として捉え直すと、聴き方そのものが変わります。ゆっくりした楽章でふっと集中がゆるむのは、失礼でも集中力不足でもありません。作曲家が意図的に緊張を解く場面を置いているのですから、その通りに緩んでいるだけです。

楽章の合間で拍手をしないのも、マナーで縛るためではありません。4つの場面がひとつの物語として流れていくのを、途切れさせないための仕掛けです。理由が分かれば、次にどのタイミングで手を叩けばいいか迷う必要もなくなります。

私が「全部わかろうとしなくていい」と言うのは、投げやりだからではありません。むしろ逆で、作曲家が最初から「聴き手の集中は途中で切れるもの」として楽章を設計しているからこそ、その設計に乗ったほうが自然に楽しめる、という話です。目的から設計しなおして初めて、身構える必要のなさが見えてきます。

よくある質問

Q. どの楽章から聴いても大丈夫ですか。

A. 大丈夫です。特に第2楽章は旋律だけを取り出して名場面になっていることが多く、そこだけ集中して聴いても十分に楽しめます。全曲を通しで聴くのは、慣れてからでかまいません。

Q. 初めて聴くならどの曲がいいですか。

A. モーツァルトの交響曲第40番は疾走感のある旋律が印象に残りやすく、ベートーヴェンの第5番は冒頭の動機を追いかけるだけで場面の変化を体感できます。どちらも1つの旋律を覚えて臨むと、楽章をまたいだ再会を楽しめます。

まとめ

交響曲は、オーケストラ全体で奏でる多楽章の大規模な曲です。ただ、いちばん大切なのは定義ではありません。気分の違う4つの場面が並んでいるだけ。全部を同じ集中力で追わなくていい。1つの旋律との再会を楽しむところから、まず始めてみてください。

気になる曲が見つかったら、LF CLASSICの演奏会情報で実際に聴ける公演を探してみてください。ほかの記事はブログ一覧からどうぞ。

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この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。

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