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協奏曲とは?“独奏者だけ”を聴く曲じゃない|交響曲との違い

協奏曲とは?“独奏者だけ”を聴く曲じゃない|交響曲との違い

「協奏曲(コンチェルト)」と聞くと、天才ソリストが超絶技巧を披露し、オーケストラはそれを引き立てる伴奏役。そんなイメージ、ありますよね。CDや配信サイトで「〇〇の名演」と紹介されるのも、たいてい独奏者の名前です。

でも、オーケストラの側でテューバを吹いてきた私から見ると、そのイメージだけで聴くのは半分もったいないです。協奏曲は“独奏者だけ”を聴く曲ではありません。

協奏曲とは? ― まず1分だけ

協奏曲とは、独奏楽器(ソリスト)とオーケストラが共演する曲のことです。ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲のように「独奏楽器+協奏曲」の名で呼ばれ、多くは3つの楽章で書かれます。第1楽章の終盤には、オーケストラがふっと静まり独奏者ひとりが技巧を披露する「カデンツァ」という聴かせどころが置かれるのが定番です。

交響曲との違いは「主役の置き方」

よく混同される交響曲との違いは、ひとことで言えば主役の置き方です。

主役

楽章数の目安

協奏曲

独奏者+オーケストラ

3楽章

交響曲

オーケストラ全体

4楽章

独奏者という主役を立てるのが協奏曲、オーケストラそのものが主役なのが交響曲。ここまでは、たいていの解説にも書いてあるとおりです。問題は、この先です。

でも“独奏者だけ”を聴くのは、もったいない

ここからが本題です。協奏曲を「ソリストの見せ場」としてだけ聴くと、いちばんスリリングな部分を聴き逃します。協奏曲の面白さは、独奏者とオーケストラの“対話”にあります。独奏者が問いかけるように旋律を差し出すと、オーケストラがそれを受けて返します。時に寄り添い、時にぶつかり合い、また溶け合っていきます。

私たちオーケストラの奏者は、ソリストの呼吸を全身で感じながら、支えたり、押し返したり、あえて一歩引いたりしています。テューバのような低音は、その土台をつくる係です。リハーサルで指揮者から「ここはソリストに委ねて、音量を半分に」と指示が飛ぶと、その一言だけで低音の重心そのものが変わります。ソリストの一音に、背後で何十人がどう応えているか——そこに耳を向けると、同じ曲がまるで立体的に聞こえてきます。

カデンツァは、もともと独奏者がその場で即興する部分でした。実力と閃きがそのまま試される、独奏者ひとりの時間です。ところがベートーヴェンは、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」でこの慣習に踏み込みます。楽譜のカデンツァの位置に「即興で弾かず、そのまま次へ進むこと」と自ら書き込み、即興の余地を残さなかったのです。ソリストの自由に委ねられていた部分まで、作曲家が設計に組み込んだ——協奏曲という形式が、時代とともにどう作り替えられてきたかがよく分かる一例です。

一段深く ― 協奏曲は「誰を主役にするか」を設計しなおした形式

デザイン思考の言い方をすると、協奏曲という形式そのものが「今あるものを前提にせず、目的から設計しなおす」ことの積み重ねに見えてきます。バロック期のコレッリらが書いた合奏協奏曲は、少人数の独奏グループ(コンチェルティーノ)と、オーケストラ全体(リピエーノ)が対話する形でした。主役はまだ「グループ対グループ」だったのです。それが古典派の時代になると、主役は「ひとりの独奏者対オーケストラ」へと絞り込まれていきます。さらに時代が進むと、ブラームスはヴァイオリンとチェロの二人を主役に据えた二重協奏曲を、ベートーヴェンはヴァイオリン・チェロ・ピアノの三人を主役にした三重協奏曲を書きました。

つまり協奏曲は、「独奏者が主役」という一つの正解に固定された形式ではありません。誰を主役に置き、オーケストラとどう関係させるか——そのつど目的から設計しなおされてきた形式なのです。次に協奏曲を聴くときは、「今日の主役は何人で、オーケストラとどんな関係を結んでいるか」に目を向けてみてください。聴き方そのものが広がります。

よくある質問

Q. 協奏曲と交響曲は何が違うの?

A. 主役の置き方が違います。協奏曲は独奏者(ソリスト)がオーケストラと共演する曲、交響曲はオーケストラ全体が主役の曲です。楽章数も協奏曲は3つ、交響曲は4つが基本です。

Q. カデンツァは必ずあるの?

A. 多くの協奏曲は第1楽章にカデンツァを持ちますが、必須ではありません。ベートーヴェンの「皇帝」のように作曲家自身が即興を封じた曲もあれば、逆に作曲家がカデンツァを書かず、後世の演奏家がそれぞれ違うカデンツァを添えて弾き継いでいる曲もあります。

まとめ

協奏曲とは、独奏者とオーケストラが共演する曲。でも“独奏者だけ”を聴くのはもったいないです。独奏者とオーケストラがどんな関係を結んでいるかに耳を向けると、協奏曲は何倍も面白くなります。まずは今度のコンサートで、ソリストの一音に背後がどう応えているか、そっと耳をすませてみてください。

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この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/一般社団法人LFコンサート 代表理事/テューバ奏者。広島県三次市出身。九州大学で音響設計と音楽マネジメントを学び、デザイン思考を軸に持つ。演奏する側の実感と“音の仕組み”の両面から、「誰もが音楽にたどり着ける道筋」のリデザインに取り組む。

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